ハッピー ハロウィン ハプニング

第4章
〜 幸せの意味 〜


 そのとき、突然入り口の扉が開かれた。
 みんなが振り返ると、部屋着姿でヘア・ネットをかぶったマクゴナガル先生が談話室に入ってきた。

 「あなた達、今何時だと思っているんですか!明日も授業があるんですよ!!」
 先生はすごい形相でまくし立てた。

 「マクゴナガル先生、申し訳ない。私がつい長居をして、生徒たちに相手をさせてしまったんだ。どうか彼らをせめないでやってほしい」

 グリフィンドールがすまなそうに詫びると、マクゴナガル先生はギョッとした表情で彼を見た。

 「あなたは誰ですか!?いったいどこから?あな・・・おや、私、どこかでお会いしたような・・」

 「先生、この人は創設者のグリフィンドール先生ですよ!」
 ジェームズがにこやかに説明した。

 「なんですって!」
 マクゴナガル先生が、すっとんきょうな声を出した。

 「こんばんは、先生。今夜はここの生徒たちに招待されましてね。いや、実に楽しいハロウィンでしたよ!」
 

 「はあ・・・さようで・・・」
 マクゴナガル先生は、しばらくポカンとしていたが、はっと我に返るといきなりこう叫んだ。

 「あらやだ!わたしったらこんな格好で、しかもノーメイクだわ!」
 先生は真っ赤に頬を染めると、慌てて部屋から飛び出していった。

 「おおっと、もうこんな時間なのか!ついつい長居をしてしまったね。
  そろそろ、シリウス君に体を返してあげなければ」

 グリフィンドールはそう言うとイスに座り直し、再び、透き通ったゴーストの姿で浮かび上がった。

 「ドサッツ!!」
 大きな音がした。見ると、シリウスがイスからずり落ちて、床の上にのびていたんだ。

 「シリウス!大丈夫か?」
 私たちは急いで彼を抱き起こした。

 「オ・・・オレ、なんでこんなに、フラフラするんだ?・・・なんで腹がパンパンなんだ?・・・うう・・・なんでこんなに、気持ち悪いんだあ?」
 彼は顔を真っ赤にしてあえぎながら、焦点の定まらない目を私たちに向けようとした。

 「おやおや・・すまなかったね、シリウス。君の体に、スコッチはまだ早かったようだ」

 グリフィンドールが苦笑いしながら言った。私は、彼が飲んだお酒の量にも、問題があったと思うんだがね。

 「それでは諸君、私はそろそろ霊界へ戻るとしよう。今夜はみんなと話ができて、とても楽しかった。ありがとう、私のかわいい生徒たち!」

 「先生ありがとうございました!さようなら!」

 グリフィンドールの姿は、とびきりの笑顔のまま、ゆっくりと消えていった。
 そしてその場所に青白い光の玉が現れ、独りでに開いた窓から夜空へと昇っていった。   
 翌日の朝は、寝坊して一時限目に遅刻するグリフィンドール生が続出した。
 普段だったら、どの先生もカンカンに怒ったことだろうが、責任を感じたグリフィンドールが、校長宛に一筆書いておいてくれたらしく、グリフィンドールは減点を免れたんだ。

 「やれやれ、何のお咎めもなくて良かった良かった♪」
 ジェームズが上機嫌で言った。

 「よくない! よくない! オレはちっとも良くないぞ!!」
 その日を、まるまる医務室で(洗面器を抱えて)過ごしたシリウスは、さも不満そうに反論した。

 「うう、まだ頭がズキズキする・・・」
 彼は頭を抱えながらうめいた。

 「シリウス、君、本当に何も覚えてないの?」
 私はシリウスに尋ねた。

 「だから!グリフィンドールがオレの体に入ってからのことは、何にも覚えてないって言ってるだろ!くそ・・なんでオレだけ、こんな目にあわなきゃならねーんだよ!」

 私は、この時ばかりは、心から彼に同情したよ。あの貴重な出来事を体験し損ねたんだからね。

 これで私の体験談は終わりだ。
 私が何故この話を君たちに聞かせたいと思ったか、その理由は二つある。君たちなら、それをわかってくれるだろう。

 いつか、より成長した君たちに会えることを楽しみにしているよ。

              
                        リーマス・J・ルーピン 

 ハリーは長い手紙を読み終え、フウッとため息をついた。他の3人も、しばらく黙ってハリーを見つめていた。

 「すごいぞハリー!ボクたちも創設者に会えるんだね!!早速、今度のハロウィンに試して見ようよ!」
 最初にロンが、興奮気味に切り出した。

 「まあ、ロン!あなたって、ホントに何もわかってないのね!」
 ハーマイオニーが、あきれ顔で首を振った。

 「え、なに?どういう意味さ!」
 ロンは彼女の言葉が理解できないようだった。

 「よかったなあ、ハリー!・・・これで、お前さんの夢が一つ叶うはずだ」
 ハグリッドが黄金虫のような目を潤ませて、ハリーの肩を優しくたたいた。。

 「あのさ・・・ハリー。ぼく、君のお父さんかお母さんに、ぼくの体を使ってもらってもいいよ」

 そう言ったのは、ロンだった。ハリーが振り返ると、彼は少しバツの悪そうな顔でうつむいていた。が、すぐに真顔でハリーを見つめると、こう付け加えた。

 「ぜひそうしてほしいんだ。ぼく、体だけはデカくて丈夫だからさ!」

 「よかったわね、ハリー。私も協力するわ」
 彼の隣で、ハーマイオニーも微笑んでいた。
 ハリーは胸の中に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。

 ハグリッドの小屋を出ると、太陽が山並みの少し上で、赤く燃えていた。
 ハリーは、それを心から美しいと思った。

 「君の両親に会えるの、楽しみだなあ!」
 ロンが声を弾ませていった。

 「ロン、ぼくの両親に体を貸したら、ぼくに抱きついたりキスしたりする事になると思うんだけど、それでもいいのかい?」

 ハリーはニヤリと笑いながら、親友の顔をチロリと見た。
 するとロンは、ギョッとして立ち止まった。

 「う〜ん・・そういうことかあ・・・」
 彼は腕組みしながらつぶやいた。

 「まっ、しょうがないや!それに、どうせその間ぼくは意識がないはずなんだから、ガマンしてやるよ」

 「そうか、ガマンしてくれるんだね・・・嬉しいよ。なんなら、今から練習しておいてくれてもいいんだよ、パパ!」
 ハリーは両手を広げて、おどけてみせた。

 「遠慮しておきます!!」
 ロンもすかさず、逃げの体制に入った。

 「もう、2人とも!じゃれてばかりいないで、さっさと行くわよ!!」
 ハーマイオニーがいつもの口調でビシャリと言った。

 「え、もう大広間に行くのかい?夕食には、まだ早いぜ!」
 ロンが時計を見ながら言った。
 
 「そうよ、だからこそ急ぐのよ!」
 ハーマイオニーがイライラしながら叫んだ。

 「・・だから、どこへ・・」

 「図書館に決まってるでしょう!?今から、『ハロウィンの魔法』を借りに行くのよ!!」

 「「・・はい、はい、はい!」」
 少年たちも急いで駆けだした。

 足取りと一緒に、ハリーの胸も弾んだ。
 ハグリッド、、ロン、ハーマイオニー、そしてルーピン先生、大好きな彼らの心遣いが、たまらなく嬉しかった。
 そして彼には、本当の親のように彼を慈しんでくれる、名付け親もいるのだ。

 ハリーは心から思った。

 「そうなんだ!ぼくには解っている。幸せって、こういうことなんだ!」


〜 おわり 〜



作者のコメント


こちらには、初めて投稿させていただきました。
本当は、ハロウィン企画のプレゼント用に書き始めたものなのですが、結局間に合わせることができませんでした。世の中はすでに、クリスマス・ムードに包まれているというのに・・・
季節はずれな内容ですいません。

このお話は、以前投稿した「3000ヒットお祝い」イラストを描いているときに思いつきました。
「ハロウィンの魔法」という本や、霊を呼び出す呪文、グリフィンドールが「変身術」「闇の魔術に対する防衛術」を教えていたなど、でっち上げ満載、やりたい放題に書いてしまいました。

ちなみに、私が創設者について、どうしても譲れない設定が少しだけあります。それは、「グリフィンドールさんは、お茶目で思いやり深い、ハンサムさんだった」です。


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