ハッピー ハロウィン ハプニング
第1章
〜 分厚いふくろう便 〜
ある土曜日の午後。
ハリーとロン、ハーマイオニーの3人は、ハグリッドの小屋で、のんびりと紅茶をすすっていた。
「ボク、土曜日って大好きさ。この開放感!お茶が一層おいしく感じるよ」
ロンがイスの背もたれを大いに活用して、後ろに伸びをしながら言った。
「それに今日は、宿題も片付いているしね!」
ハリーも笑いながら彼に続いた。
「それにもうすぐ、ハロウィンよ!ああ私、とても待ち遠しいわ!」
ハーマイオニーの弾んだ言葉に、2人の少年も目を輝かせて頷いた。ハロウィンの夜には、すばらしい宴会が開かれるのだ。
「ほれ、お前たち、ロックケーキを作っておいたんだ。食わんか?」
ハグリッドが大きなお皿を抱えて、ニコニコしながらテーブルにやってきた。
「あ、ありがとう・・」
ロンが作り笑いで答えた。ハリーは、そんな2人のやり取りに苦笑いしながらも、平和なひと時に幸せをかみしめるのだった。
「コンコンコン!」
ふいに、ガラスが叩かれる音がした。4人が振り向くと、窓の外枠に見慣れないふくろうが一羽、止まっていた。
「シリウスからかも!」
ハリーが急いで窓を開けてやると、ふくろうは厚みのある一通の手紙を彼の手元に落とし、疲れた様子で、ふくろう小屋の方角へと飛び去っていった。
「やけに分厚い手紙だな・・・あれ、宛名が僕たち3人の名前になってるよ!」
ハリーは意外に思いながらも素早く封を開け、シリウスの名前を探した。しかし手紙の差出人は、彼が予想していなかった人物だった。
「ああ!ルーピン先生からだ!」
「まあ、本当?」
「先生、元気にしているのかなあ?ハリー、ボクたち宛なんだろ?声を出して読んでおくれよ!」
ロンに催促されて、ハリーは羊皮紙の束を開き、手紙を読み始めた。
「えーと・・・親愛なるハリー、ロン、ハーマイオニー、みんな元気にしているかい?
もうすぐ君たちが楽しみにしている、ハロウィンだね。
実は昨日、私の学生時代のハロウィンの出来事を、ふと思い出してね。君たちに聞かせたら、きっと喜ぶのではないかと思い、ペンを取りました・・・」
ハリーは、少し癖のある文字を眼で追いながら、ルーピン先生の穏やかな表情を思い浮かべた。すると、すぐそばに先生がいるような気がしてくるのだった。
※
10月のある日、私とシリウスが談話室でチェスをしていると、ジェームズが分厚い本を抱えて寮の外から戻ってきたんだ。
「なあ、お前たちが喜びそうな面白い計画があるんだ。少し耳を貸せよ!」
彼は「魔法いたずら仕掛け人」の顔を輝かせて私たちにささやいた。
「いったいどんな事?」
テーブルに頬づえをついてチェスを見物していたピーターが、ジェームズを見上げた。
「詳しいことは寝室で話してもいいかい?ここは今、騒がしいからさ!」
「ようし、そういうことなら、ゼンは急げだ!・・・さーて、お片づけ、お片づけ〜♪」
シリウスは、嬉しそうにそう言うと、チェス版に向かって杖を振った。
「ヤロウども、撤収!」
彼が叫ぶと、駒たちはゾロゾロと箱の中に戻っていき、ボードの上には不満そうな2人のクイーンだけが残った。
「ああっ!ボクが勝っていたのに、ずるいぞ、シリウス!」
「まあまあ、そう熱くなるなよ、リーマス!チェスなんて、いつだってできるじゃないか。だけどな、いたずらは違うぞ!この貴重な機会を無駄にしてはいけないよ君!」
シリウスは、クイーンたちの前に恭しく手のひらを差し出しながら、悪びれずにそう言った。
彼はああ見えて、チェスだけは私より弱かったんだ。ハリー、君もそのうち、彼を負かしてやるといい・・・と、話がそれたね。
それから4人で寝室に入ると、ジェームズが手にもっていた本を私たちの前に突きつけた。その表紙には、金色の飾り文字で「ハロウィンの魔法」と書かれていた。
「さっき図書館で、この本を見つけたんだ。タイムリーな本だと思って、読んでみたんだけどさ・・・ほら、ここを読んでみろよ」
彼はそう言いながら、しおりをはさんだページを開いてテーブルの上に置いた。
「なになに・・『霊を呼び出す魔法』だって?」
シリウスがいぶかしげに呟いた。
「あのさ、ハロウィンは死んだ人の魂が地上に帰ってくる日だろ?だから目には見えなくても、亡くなった人の霊がたくさん、ボクたちの周りにも来ているはずなんだよ」
「やだなあ、ジェームズ、不気味なこと言わないでよ」
ピーターがあたりをキョロキョロしながらうめいた。
「まあ、最後まで聞けよ、ピーター。本によると、ここにかかれている方法で、近くに来ている霊を呼び出すことができるらしいんだ。つまり、ほとんど首なしニックや、血みどろ男爵みたいに、目に見える形でさ!」
「なるほど!それで?」
シリウスの言葉にも力がこもってきた。
「この魔法は、ハロウィンの日没から日の出の間のみ有効なんだ。どうだい?ハロウィンの夜、宴会のあとで試してみないか?」
「ジェームズ・・君もしかして、その本、閲覧禁止棚から持ってきたんじゃないだろうね?」
ピーターが疑うような目でジェームズを見た。
「失礼だな、ピーター!これは一般の棚から、ちゃんと手続きを済ませて借りてきたんだぞ!」
ジェームズが胸を張って主張した。確かにこの時は、彼の手に透明マントは握られていなかったんだ。
「よし、その話、乗った!」
シリウスが嬉々として叫んだ。
「面白そうだね!で、どこでやるの?この部屋かい?」
私もジェームズに尋ねた。
「この部屋ではできないんだ。談話室がいいと思うんだけど」
「で、でもさ・・もしも悪いヤツの霊が出てきちゃったら、マズくないかい?」
ピーターが、またもや不安げに切り出した。
「いやなら、お前は1人で先に寝ていろよ。目に見えない霊どもと一緒にさ!」
シリウスが彼をからかった。
「一応、呼び出す霊はこちらで指定できるんだ。それで、その霊が近くに来ていさえすれば、呼びかけに応じてくれるはずなんだ!」
「ねえ、談話室でやるなら、他のみんなにも声をかけてみないか?ハロウィンなんだしさ。大勢のほうが楽しいんじゃないかな?」
「それもそうだな。みんなもきっと面白がるぞ!」
ジェームズの熱のこもった説明に、私とシリウスはすっかりやる気になっていた。
「よし、決まりだね!ピーター、君はどうする?」
「わかったよ、ボクも参加するよ!」
「それじゃあ、早速準備をはじめよう。もうあまり日がないからね!」
そういう訳で、私たちは「寮内ハロウィン・パーティ」を盛り上げるための仕度に取り掛かったんだ。4人の中で一番張り切っていたのは、やはりシリウスだったかな。
「張り切ってるね、シリウス」
「あったりまえだろ?オレのモットーは『何事にも手を抜かない』ってんだぜ!」
「はいはい、どんちゃん騒ぎとイタズラにもなんだよね」
ジェームズが、自分のことをすっかり棚にあげて、笑いながら言っていたな。
そして数日後、いよいよハロウィン当日をむかえたんだ。
〜 第2章へつづ く〜
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